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宇都宮地方裁判所 昭和30年(行モ)1号 決定 1955年3月07日

申請人 大塚茂子 外二名

被申請人 雀宮町町議会

主文

申請人等の本件申請はこれを却下する。

申請費用は申請人等の負担とする。

理由

申請人等代理人は、「被申請人が昭和三十年二月十四日雀宮町議会に於てなした『雀宮町を廃止し宇都宮市に編入する』との議決は、その執行を停止する。」との裁判を求め、その理由は、被申請人は、昭和三十年二月十四日、雀宮町役場二階に於て第十一回雀宮町議会を開会し、「雀宮町を廃止その区域を宇都宮市に編入合併するものとする」との議事につき、議員二十三名出席の下に表決をなし、賛成十七でこれを議決したが、右表決手続は、雀宮町議会会議規則第四四条、第四五条第五九条第六〇条第六一条第七九条に違背し且つ言論の自由を侵害し憲法の精神に反しているから同表決によりなされた議事は重大な瑕疵があり取消さるべき行政行為である。依つて申請人等は被申請人を被告として、昭和三十年二月二十六日当裁判所に町議会の議決取消請求事件を提起し、現在昭和三十年(行)第二号事件として係属中であるが、右議決の執行により生ずべき償うことの出来ない損害を避けるため緊急の必要があると認められるから議決の執行を停止すべきことを命ずる仮の処分を求めるものである。というものである。

按ずるに疎甲第一号証(会議結果報告書)等によれば申請人主張の如き合併に関する議決が為されたことは明かである。よつて申請人がその執行を停止する旨の仮の処分を求める議決が、行政事件訴訟特例法第二条の「行政庁の違法な行政処分」なりや否やと云うに市町村の廃置分台については地方自治法第七条第一項に、「市町村の廃置分合云々は関係市町村の申請に基き、都道府県知事が、当該都道府県の議決を経てこれを定め云々」同条第五項には、「第一項の申請は関係のある普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。」の定めがある。ところが申請人が議決執行の停止の仮の処分を求めている議決は、同法第七条第五項の議決であると解せられるが、同条第五項の議決は、同第七条第一項の合併等の申請を市町村が都道府県知事になすや否かについての、普通地方公共団体である市町村議会の意思決定そのものであり、それ自体としては外部に対し意思が表示されるものでなく従つてまた外部に対して直接法律上の効果を及ぼすものではない。それ故議決そのものは、行政庁の処分すなわち行政訴訟の対象となる行政処分ではなく、地方自治法第七条第一項の申請を行う前提要件をなすに過ぎない。従つて前記被申請人の合併議決はそれ自身行政訴訟の対象となる行政処分ではない。然らば前記議決表決の手続が雀宮町議会会議規則乃至憲法の精神に及するや否やは論議の余地はなく、又該議決の執行により生ずべき償うことの出来ない損害を避けるため緊急の必要があるか否かには関係なく申請人等の本件議決の執行停止の申請はその理由はない。依つて主文の通り決定する。

(裁判官 岡村顕二 広瀬賢三 時国康夫)

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